更新:2021年11月5日

朝の冷え込みが厳しくなってきました。
北国から始まった紅葉前線も関東、東海地方まで南下してきましたね。季節は晩秋です。

コロナ感染者数が減少傾向になり、緊急非常事態宣言も解除されました。
まだ安心はできませんが、人々が少し緊張から解放された様子がTVのニュースで見られます。
解放されついでに、ちょっと贅沢をしましょう。

今月のいっぷく。は、 口切ノ茶です。

外箱
内箱(2個詰めです)

口切と聞いただけですと、怖いことを想像されるかもしれませんが、そうではありません。
口切ノ茶*1は、八十八夜に摘んだ新茶を、茶壷に入れて貯蔵し、熟成させて、秋に蔵出しをするお茶のことです。 

蔵出しするお茶と言えば、静岡では、毎年秋(10月下旬頃)に「駿府本山お茶壺道中行列」と「口切ノ儀」いう行事が行われています。(2021年はコロナ禍の影響で、駿府本山お茶壺道中行列は中止となっています。)
また、この行事は、5月に行われる「茶詰めの儀」、お茶壷道中の前に行われる「蔵出しの儀」と併せた一連の行事になっているそうです。*2
これは、隠居した徳川家康が、井川の大日峠(静岡市)のお茶蔵に保存し熟成させた新茶を、駿府城まで運ばせた道中を再現したものだそうです。さすがお茶どころ静岡ですね。
また、徳川家と言えば、江戸時代に、宇治から将軍家にお茶を献上する、お茶壺道中があったそうです。*3

口切りと言うならば、茶道にも口切茶事というお茶会があります。
毎年11月に行われる炉開きには、茶壷にいれて熟成させておいた新茶を石臼でお抹茶にして、お茶を点てます。これが、口切茶事と言われ、茶道におけるお正月で、格式高いお茶会なのだそうです。

若々しい新茶を愉しんだり、半年間熟成させたお茶を堪能したり、庶民から権力者まで嗜まれている日本茶には、まだまだ様々な楽しみ方がありますね。

✳︎1: 口切ノ茶(煎茶)は、静岡の市川園が販売しているお茶の商品名で、予約販売となっています。写真にあるように、まるで献上茶のごとく丁寧に梱包され、個別の箱には口切りをイメージさせるような封が施されています。

✳︎2: 駿府城本山お茶壷道中は、時代衣装を纏った人たちが、静岡茶市場から駿府城公園まで練り歩く行事で、その後、駕籠に乗せられた茶壷を久能山東照宮へ運び、茶壷の封を切る、「口切りの儀」を行い、献上、奉納されます。

*3: お茶壷道中は、徳川家光の時代(寛永10年)から制度化され、幕末まで続き、その格式は大名行列よりも上だったそうです。
京都の上林春松は、御物御茶師(朝廷、将軍家のお茶を調達する役目)として幕府に仕え、現在に至っています。超老舗ですね。